ねずみーにょとロビン

「若さまの気まぐれには困るよねぇ、ねずみーにょ。今日もさぁ……」
「きゅぅ」
「うん、そうなんだよ。あ、そろそろごはんの時間だね。はい、鳥肉。ほんとにねずみーにょは鳥肉が好きだねぇ」
「きゅぅ!」
「それはよかった」
「…………」
 にこにこしながら自室で謎の小動物と会話しているロビンを、同僚たちは扉の隙間から観察し、互いに顔を見合わせた。こそこそ会話する。
「……あいつ何と会話してんの?」
「……ねずみーにょだろ」
「ねずみーにょって、だから何」
「俺はねずみの一種だと思ったけど」
「……ねずみの一種は人間と会話するのか?」
「……しないだろうな」
「じゃぁなんでロビンは会話してんだ」
「いや、あれは会話というより、ほとんど独り言だ」
「あいつ……誰より若さまにこき使われてるからな。かなり疲れてるんだろう」
「ああ、そうか……、誰か若さま付きを代わってやれよ」
「いやだよ」
「俺もやだよ」
「……」
「……」
「と、ところで、ねずみーにょって動物名?ロビンがつけた名前だっけ」
「俺は若さまがそう呼んでたって聞いたけど……」
「なんにしろ『にょ』ってどういう意味でついてんの?」
「さぁ……。しかし、なんか可愛いけど怪しげな生き物だよな」
「そういえば、むかし俺のばあちゃんが魔女の森の動物は捕ってこないほうがいいって言ってた」
「なんで?」
「魔女が魔法をかけてるかもしれないからって」
「動物に?」
「いや、動物にっていうか。捕まえた人間に魔法をかけて、動物に変えてそこらに埋めて、保存食にしてたりするから、うかつに手を出さないほうがいいって」
「えぐいな」
「うん、人間がその動物捕まえて食べたら、じつは共食いしてましたってことになるな」
「……なぁ、ロビンあれ、土に埋まってたのを引っこ抜いてきたって言わなかった?」
「え、ああうん……土から頭だけ出てたって、言ってたような」
「…………」
「…………」
 そのとき、ロビンがようやく視線に気づいて扉のほうを振り返った。
「ちょっと。みんな何やってるんですか、人の部屋の前で」
「えーと、あのな、ロビン」
 覗き込んでいた全員で、再び顔を見合わせる。
 一人が代表してロビンに言った。
「良い子だから、そのねずみーにょは魔女さんのところに返してきなさい」




つづくよ!


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