在りし日の おまけ

 本当に、デキル魔法使いなのだから、もうちょっとそれらしくすればいいのに、とレスターは縫い物をする祖父を見ながら思った。
「じいさん」
「なんだね、孫よ」
「相手は人形だぞ」
「ただの人形じゃないだろう?」
「服なんか着なくても平気だろ。あれは風邪なんか引かない」
 器用な手つきで、祖父はレスターのお古の服を小さく繕い直していた。
「でも、着ていた方がかわいいと思うがね」
「………」
 よし、できたよ、と言って、祖父は自分の傍でわくわくしながら見守っていた人形に、水色の服を着せた。
「うわぁ、うわぁ」
 わぁい、とはしゃぐ人形は、まるで人間の子供みたいだった。
 やはり、どこかの誰かをほうふつとさせる。
「………」
「レスター、やさしくしておやり」
「…………………………………考えとく」
 かなりの間を空けて答えたが、祖父は満足げに頷いた。



おわり

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